2016年12月17日土曜日

【NHK大河連動 ”明日の『真田丸』”50】 第50回「真実」 ~放映前の大妄想ファン感謝祭!裏真田丸はこれだっ!SP~



 いよいよ、明日になりました。

 1年という長い間、私たちを笑いと涙の渦に巻き込んだNHK大河ドラマ「真田丸」は、近年稀に見る大傑作であったことは誰もが認めることでしょう。


 脚本に当たられた三谷様をはじめ、出演者のみなさま(ああ!ここであえての主役の堺さんだけでなく、このドラマに出られたすべての人が同等に素晴らしい演技であったと大喝采を送るところであります!)のご尽力に、心から御礼申し上げます。



 で・・・。


 で・・・!



 大変遺憾なことながら、あってはならぬことながら、明日の放映をもって我らが真田信繁は、恐らく死んでしまうのでしょうが、それはそれとして、大真田丸ファンのわたくしとしては、ここであえての



 もう一つの未来!


に目を向けたいわけで。



 ああ!それは史実とは違うかもしれません。あるいは明日のお話とは全く違うかもしれません。

でも、でもここで放映前に、まだ未来が確定する前に書いておきたい物語があるのです。



 パラレルワールドかもしれないし、妄想かもしれないし、間違っているかもしれない。



でも、あえて書いてしまう不遜をお許しくださいませ!ああ三谷大先生!リスペクト故のこの裏物語を、どうか見逃してやってください。


 というわけで、今回は、明日の本放送を完全に無視した、裏真田丸の最終回、あえての2字タイトルで


第50回『真実』


をお送りします。





==========





 慶長20年5月7日、豊臣方は最後の決戦として、大阪城を出て南方に布陣、幸村は茶臼山に陣を置いた。


 後藤又兵衛亡き後、先陣を切って飛び出したのは毛利勢であった。これをきっかけに合戦が始まり、兵と兵とがぶつかり合い、火縄銃の銃撃が飛び交う大合戦となる。

 毛利勢は、徳川先方の本多勢を蹴散らし、その後に続いた家康方の軍勢を大混乱に陥れる。


 その間隙をついて、幸村率いる真田隊は、
 
「狙うは家康の首のみ!」


と手薄になった徳川勢本陣へと猛然と進み始めた。


 幸村は、利休が隠していた短筒を懐に忍ばせつつ、赤備えの騎馬武者姿に六文銭の旗印を翻しながら駆ける。


 毛利勢に苦戦する徳川勢の中には、佐助の姿があった。

 「浅野殿、寝返り!」

の声が、武将たちの中に響き渡ると、ざわめきと混乱が一層大きくなり、あるいは身を反転させて逆方向へ走り出す者も現れ始めた。


 家康本陣には、危急を告げる兵の姿が倒れるように走りこんでくる。


「豊臣勢!すぐそこまで来ております!」


「なに!それはまことか!」


 慌てて立ち上がり、「馬を!」と敗走の準備をしようとする家康たちに、真っ赤な装束の真田隊の一派が、なだれ込んでくる。


 応戦する徳川勢、逃げようとする家康、側近たちに囲まれながら、本陣を捨てて走り出そうとする家康の目には、彼方から一直線にこちらへ向かってくる騎馬武者の姿が映った。


「真田・・・・」

「大御所さま!早う!」


 しかし、家康は身動きすらできない。二人の目がしっかりと合った。


 幸村は馬上から短筒を抜き、真正面から狙いを定める。


 次の瞬間、乾いた銃声とともに、家康のほほから一筋の血が流れた。


「大御所様っ!!!」


 我に返った家康は、慌てて馬に乗り走りはじめた。


 大混乱で取り囲む雑兵たち。


 「逃がさぬっ」


 幸村は小さくつぶやき、追撃しようとしたが、まだ距離がある。走る家康、追う幸村。しかし、軍勢の混乱に阻まれ、遅れを取った。



「もはやこれまでかっ」


 家康の眉間にいっそう深い皺が刻まれる。滴る汗が止まらない。頬をかすめた銃弾の跡が、じくじくと傷みはじめた。


「いっそ、腹を・・・」


「なりませぬ!」


 側近達が、こちらも必死の思いで家康を止める。真田の猛攻はまだ続いている。


「とにかく、早う!」


とせかされるように、家康を乗せた馬は、今は一歩でも遠くへと駆け抜けるのであった。


 本陣では、家康の馬印が倒れ、無残にも踏み荒らされていた。






  猪突猛進で突き進んだ真田勢であったが、次々に押し寄せる徳川方の軍勢に、1人、また1人と命を落としてゆく。追う者であった幸村がいつしか追われる者となるのに時間はかからなかった。


 振り返ると、大阪城の方面から火の手が上がるのが見えた。


「無念ながら、ここまでか・・・・」





  一方、秀頼の出陣を促そうと大阪城へ戻った大野と、合流した大助の前には、それを制止する茶々の姿があった。

「なりませぬ。絶対になりませぬ!」

「しかし、ここで右大臣さまのご出馬とあれば、必ずや士気も上がり、勝利すること疑いなしと!」

心からの懇願をする大野に、それでも茶々は許可を出そうとしない。


 そこへ、きりをはじめ側近が駆け込んで来た。


「火が!火の手が上がりました!」

「なに!」

立ち上がる大野。

すぐに付近からかすかな煙らしき臭いが立ちこめはじめた。

 
「徳川方への裏切り者が、火を!」


きりが報告すると、「すぐに消せ!」と怒号がとんだ。






 同じ頃、当初こそ、徳川軍を大混乱に陥れた毛利勢であったが、徐々に押し戻されているのを感じ始めていた。

「くそっ!一旦引け!立て直すぞ!」

と叫びながら、毛利隊は大阪城方面へと戻り始める。





 城内を出て、高みから城下の様子を確認する秀頼たち。

 出火の混乱の中、毛利の帰城の報告を受けた大野は、


「真田殿は!」


と毛利に尋ねるが、首を横に振る。「俺にもわからん。家康の陣まで切り込んでいってからその後は・・・。明石たちともはぐれた。無事だと願うばかりだ。」


 大野治長の表情が一層けわしくなり、唇を噛んだ。


 「捕らえました!」

 その時、内通した武将を捉えた大野の家臣達が、なだれ込んできた。


「もはやこれまで、降伏いたしましょう!」


火を放った張本人が、秀頼に直訴する。ところが、


「命を賭して戦っている者がいるというのに!」


温厚な秀頼の目に憤怒の色が浮かんだ。次の瞬間、秀頼は裏切り者の頭を思いっきり蹴倒した。

 
そのまま、ゴロゴロと転げ、城壁から転落する。


「右大臣様!」

制した大野は、秀頼の目から涙が溢れるのを見た。大野は、覚悟を決めた。


「大助殿、話がある。そなたを真田左衛門佐殿の嫡男と見込んでの頼みである」


 大助は、はっと顔を上げた。






 徳川勢の追撃を逃れ、しばしの休息を取っていた幸村勢の回りに、ざざっと気配が動いたのは、ちょうどその頃だった。


「囲まれたか・・・」


 もの怖じせずに、悠然と立ち上がる。


 すぐに騒然となる真田隊。


「我ら、越前松平家中の者!真田殿とお見受けいたす!」


敵方の武将から声がかかった。


 いかにも・・・・、と幸村が答えようとした瞬間、口をふさがれ押し倒された。


「なっ・・・」


見ると赤備え甲冑姿の佐助であった。


「ここは我らにお任せを、お行き下さい。一刻も早く城へ!」


「し、しかし・・・」


「村の者をつけております。秀頼公のご命令です。しげみから抜ける道がございます」


指し示す方向に、無理やり押し込まれるように突き飛ばされた。


 佐助は、


「ごめん!」


と幸村の兜を奪った。


 「いかにも、我こそは真田左衛門佐幸村である! 松平殿なら相手に不足はない!いざ出会い召され!!」


さっそうと騎馬に乗り、佐助は突進していった。


 その胸を、一発の銃弾が射抜く。走り去りつつあった幸村の耳に、その音が突き刺さったのは言うまでもない。




 火の手が既に大きくなっていた大阪城には、茶々たちの姿があった。


「わたしは、ここに残ります」


「お上さま!そんなこと言わないで!ほら、はやく!」


きりが取りすがって説得しているが、茶々は頑として譲ろうとしなかった。



「かくなる上は、右大臣殿に生き延びていただくのが勤め、ぜひとも彼らとともに!島津殿には、話がついておりますゆえ」


大野も平身低頭して言うが、茶々の目には信念のようなものがあった。


 そして、傍らの大助の手をとった。


「大助殿、そなたのお父上に伝えてください。・・・秀頼を頼みますと。それから・・・」


その後は、 何も言わず、そっと大助の手を自分の頬に寄せ、にっこりと笑った。


 猛々しく炎を上げた柱が、また一本倒れる。


 茶々は、悠然とその炎の中へと消えていった。



「母上えええええ!!!」


 追おうとする秀頼を押し留めながら、大野が言う。


「大助殿、きり殿・・・お頼み申す」


「承知仕りました」


「行きますよ!右大臣様!」


「早く!後のことは、・・・お任せください」

毛利が、秀頼に一礼し、大助の肩を叩いた。

「親父はきっと生きている。・・・俺より先に死ぬはずがないだろう」

にやっと笑い、 大野に向き直った。

「さあ、最後の大仕事だ!」


後ろ髪を引かれながら、 涙まみれの秀頼をせかすように、大助ときりは走り出した。






 大阪城の天守が燃えていた。難攻不落、天下一の名城と言われた大坂城は落ちた。それをにらみつけながら、息も絶え絶えに座り込んでいる老人がいた。


「わしは勝ったのか・・・。これで、これで良かったのか・・・」






 それから、いくばくかの時が過ぎた。

 里には秋の気配が感じられる頃。とある田舎の村の小さな家の縁側に、寄り添うように座る二人の姿があった。


 「すべてが、夢幻のようです。昔も・・・今もそう」

 「・・・私もだ」




 村のこどもたちの手まり歌が、どこからともなく聴こえてくる。


♪花のようなる秀頼様を、鬼のようなる真田が連れて、退きも退いたよ鹿児島へ♪





 大坂夏の陣は、淀君と豊臣秀頼の自害をもって終わった。真田信繁は、越前松平家中、西尾宗次によって討ち取られた。

 享年49歳。



~ 完 ~





 















 

 









0 件のコメント:

コメントを投稿